アメリカ英語かイギリス英語か問題、共用語としての英語について考えてきた「世界の人に伝える英語」シリーズ(?)第三段は、日本語を母国語とする人が、グローバル社会でどのような英語表現を目指せばいいのかについて、考えてみます。
英語バリエーションいろいろ
ここまでは、英語表現の選択肢として、アメリカ英語とイギリス英語に焦点を当ててきました。実は、英語はとても柔軟な言語で、世界各地に多様なバリエーションがあります。オーストラリ英語、アイルランド英語、インド英語、シンガポール英語など。イギリス国内、アメリカ国内にも、多様なローカル言語があります。
グローバル・コミュニケーションの場では、英語のバリエーションに加えて、世界さまざまな言語の特徴が反映された「外国語としての英語」が存在します。フランス語風、ドイツ語風、中国語風など、話し言葉のアクセントだけでなく、構文や言葉選びにも特徴が出ます。
日本では、場面に合わせて方言と標準語を切り替えて使う人が多いですが、グローバル・コミュニケーションの場でも、英語ネイティブだけの場でも、ローカルバージョンと標準英語を使い分けている人を見たことがありません。ジャーナリスト、作家、役者やキャスターなど、言葉で伝えることが使命の職業は例外ですが、ビジネスや日常のやりとりでは、異なる英語バリエーションが混在している状態が当たり前。アクセントや、スペリングの違い、ちょっとした構文の入れ違いなど、そのままお互いの「個性」として受け入れます。
グローバル・コミュニケーションでは、アメリカ英語でもイギリス英語でも、フランス語風でも中国語風でも、伝える人にとって自然に使いこなせる英語が「英語」になります。共用語としての英語は、寛容で柔軟な言語、今現在も世界の現場で、さまざまな言語の特徴を吸収しながら進化し続けています。
意識すべきは、社会的バリエーション
世界の「方言」を受け入れてくれる懐深い英語ですが、それを使う人が、あまり寛容でなくなる場面があります。それが、英語の社会的バリエーション。方言のように地域的な特徴ではなく、所属する社会階層や職業、コミュニティによって言葉が異なるのです。職場でも日常生活でも、社会的バリエーションの壁はとても厚い。外国語アクセントや、スペリング、文法のゆらぎにとても寛大な人々が、この社会的バリエーション次第で、メッセージごと相手をバサリと切り捨てることが多々あります。
この社会的バリエーション、上流階級や知的階層の英語を使っておけば安心かというと、そうでもない。その人が何かしらの目的を持って、長期的に活動していく世界にふさわしい言葉が、あるのです。社会階層と職業、交友関係が絡み合うそれぞれのネットワークの中で、言語バリエーションが形成されています。
多言語、多文化が混在するグローバル社会において、アメリカ英語、イギリス英語、もしくは日本語英語のようなローカル風味はむしろ多様性を広げる好ましい要素。しかし、活動の場にふさわしくない社会的バリエーションを使う人間に、人はそれほど寛容ではないのです。
ネイティブでも、家庭環境や就学環境で身についた英語バリエーションを払拭するのは大変です。まして、英語を母国語としない人が、一度習得した英語の社会的バリエーションを転換するのは、とても難しい。もういちど、新しくことばを学び直すほどの努力が必要です。
暮すように学ぶ英語
今は、オンラインであらゆる情報を入手でき、日本にいながら、生きた英語を浴びるほど体感できる時代になりました。だからこそ、早い段階で、どんな英語を学ぶのか、意識的に選んでおく必要があると思います。若い世代の人には、中学英語まではしっかり勉強して、その後は、将来就きたい職業や生涯続けたい趣味のための学習を、英語で実践することを勧めています。国際ビジネスで成功したいなら、ビジネス英語、ヒップホップアーティストになって世界でライブをしたいなら、その世界の英語があります。
すでに社会人で、英語はあまり得意ではないけれど、仕事や個人活動で、英語で伝えたいことがある場合、あれこれ教材を探すより、まずは中学英語を復習。その後で、普段日本語で収集している専門分野の情報を、googleさんに頼りながら英語で収集。はじめは、ウェブマガジンひとつ、動画チャンネルひとつからでいい。毎日チェックしているうちに、新しい世界が拓けます。
ただし。ゆくゆく国際金融の舞台で活躍したいけど、趣味はオンラインゲームという場合。ゲーム実況のクセ強めな英語バリエーションが身につく前に、Financial Times購読をオススメ。
今後掲載予定の関連トピック:
- 基礎英語について
- 日本語フレーバーの英語をつくろう