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答えを探しに

詳しい状況や会話の内容は忘れているのに、あるフレーズだけが深く記憶に刻まれ、幾度も蘇ってくることがあります。そんな、何気なく、単純で、パワフルなことばのお話。

プロの答えは「わっかんない」?!

私が数字漬けの仕事から、クリエイティブ方向にシフトした頃のこと。何かの答えを出せずに、数時間だったか、数日だっか、産みの苦しみを味わっていました。

それまでに経験したのは、すべでの答えを数字で示す世界で、自分の業務にひとりで責任を負うポジション。どんな課題も、数字に相談して自分で答えを出す仕事スタイルが、骨の髄まで染み付いていました。新しい職場で、チームワークでクリエイティブに答えを導き出す世界に心躍らせながらも、まだまだひとりで答えを探してしまう日々。

その日も多分、ひとりで、データを縦横斜めにいじくり倒していたのだと思います。そんな私に「なになに?相談に乗るよ~」と声をかけてきた上司のアドバイスが、これ。

う~ん、わっかんない。お客に聞いてみよ!

当時の私には、「答えがない」という回答が存在することすら、衝撃でした。振り返れば、小学生のときにはすでに「与えられた問題には、必ず答えなければならない」と信じていました。先生に当てられたら答え、テスト問題には回答を記入する。間違えれば減点です。社会に出てもそれは変わらず、専門職では、新人でも何かしら答えを求められることが当たり前。そのことに疑問を感じたことすらありませんでした。そんな年月を経て、百戦錬磨の戦略のプロから、実にあっけらかんと「わっかんない」を聞くとは。

プロの仕事は、答え探しのガイド役

あれから長い年月を経て、やはり今も、ひとりで責任を負う立場にいるわけですが。今は、自分が答えを持っていないことを、知っています。答えは、専門家がひとりで捻り出して、「これですよ」と教示するものではないことを、あの上司に教えられました。答えは、その課題に関わるさまざまな立場の人々と、一緒に見つけにいくものだと、学びました。

どう伝えれば伝わるのか。その答えを探す冒険の旅を、できるだけ安全に、できるだけ楽しくガイドするのが、私の仕事です。

“ヒトの知恵にお犬の嗅覚を合わせて、わんチーム。ひとりではたどり着けない場所へ、一緒なら行けるよ。”